会計事務所(税理士事務所)の職員さんとして働こうと思ったとき、
あるいは今の事務所を辞めて転職をしようと考えたとき、
改めて「職員さん」が自分に向いているか心配になったことはありませんか。
当初「職員さんという立場は自分に向いていないかも…」「子育て中に向いていない業界なのかも」と思っていた私、めいじが気が付けば今や十数年のベテランになりました!
今ではパートさんや社員の面接にも立ち会うお局さんになっちゃったよ
数字を扱うこの業界では確かに向いている人、向いていない人があるなと感じます。
会計事務所に勤めて十数年の「中の人」私めいじが、どんな人が会計事務所に向いているのか、はたまた向いていないのかご紹介します。
- 会計事務所(税理士事務所)の職員さんとして働いてみたいけど向いているか心配な人
- 会計事務所(税理士事務所)の職員さんとして働いているけど、転職を考えていて、またこの業界で働くのか違う業種にいくのか悩んでいる人
向いている人の特徴
あなたは「職員さん」としての適性がありますか?
突然そんなことを聞かれても答えられる人はなかなかいませんよね。
かくいう私だって「適正がある」と堂々と言えるわけではありません。
割と「お堅い」イマージがある会計事務所(税理士事務所)でのお仕事ですが、意外とアクティブな面もあります。
周りの人に聞くと「公務員のようなイメージ」とか「黙々とデスクワークをするイメージ」があるようです。
事務所の傾向(法人・個人が多いのか、相続などの資産税の取り扱いが多いのか)によっても(かなり)変わってきますので一概には言えませんがそれでも外せない特徴はあるのです。
几帳面で細かい作業が苦にならないこと
職員さんのお仕事としては、確かに黙々とデスクワークをすることが多いです。
帳簿の入力とか信憑書類(領収書などなど)のチェックとかね。
法人の決算や個人の確定申告を引き受ける多くの事務所では基本的にルーティンワークは多いと考えてOK
多くの会計事務所では税理士(所長)が自ら会計ソフトに入力作業をしていることはなく、帳簿を作るのは職員さんのお仕事としていることが多いです。
というか税理士がお客さんの帳簿を入力してるなんてみたことないよ
Fintech(フィンテック)の導入などで仕訳を入力する作業は減っているものの、ひとつも入力作業がなくなるということはありません。
そしてフィンテックで自動入力された仕訳のチェック作業は必ず必要です!(特に消費税)
だから職員さんに求められる資質として、几帳面で細かい作業がイヤでない人という項目が絶対必要です。
タスク管理ができる
複数の仕事を同時に管理するのが得意な人(マルチタスクを管理することができる人)は職員さんに向いています。
通常期も決算・申告管理をしつつ、月次の通常業務を同時に複数社こなす必要があります。
年末調整や法定調書の申告などは、どの会社さんも全く同じときに業務が発生するので、てんやわんやも最高潮に達します。
さらにさらに、会計事務所業界での最繁忙期である確定申告(個人)の時期は十数件の仕事が同時進行することになります。
ひとつのことを終わりまでやってから次の仕事に…とはなかなかいかない業務が多いんですねぇ。
お客様の回答待ち、所長の帰社待ち(所長相談案件)、会計ソフト会社の対応待ちなどなど…
デスクワークだけでなく、複数の顧客からいろいろな質問が投げかけられるときもあります(今ならインボイスとか)
コミュニケーションが得意な人(苦にならない人)
中小企業の社長あるいは(経理担当の奥さん)は年上が多いので、目上(年上)の人とのコミュニケーションは仕事のカナメになります。
対お客様の場面では雑談でコミュニケーションを深めることもとっても大事です。
サラリーマンをしていると気が付かないのですが、経営者やその周りにいる人は孤独です。
事業継続のプレッシャー、従業員の雇用を守ることのプレッシャー、先行きへの不安はサラリーマンにはない重い重い重圧を感じています。
解決策がない悩みであったとしても、会社の中身(数字)を知っている相手との雑談は彼らの孤独感を少し和らげてくれる効果があるのです。
これは顧客満足度にも直結しますので意外なほど大事なスキルです。
事務所内では、所長・番頭さん・先輩・同僚とのコミュニケーションが必要です。
職員さんのお仕事はチームワークが大事。
自分だけで考えていては絶対わからないことが出てきます。
そんなときは所長や先輩、同僚に相談したことで解決策の糸口がつかめた、そんなことは日常茶飯事なのです。
特に新しい制度(例:インボイス制度)が出てきたときは活発に議論が交わされてるよ
事務所外では、税務署・市役所(区役所)等とのコミュニケーションがあります。
職員さんがお役所関係とコミュニケーションをとることは意外とあります。
問い合わせに対する回答だったり、申告に関する質問だったり……
結局、どんな相手であっても「言い方ひとつ」の部分があるので、常に相手の出方をみつつ突っ込む勇気・度胸があるといいのですがそれは経験とともにおいおい身につけていきましょう!
度胸がある(胆力がある)人
会計事務所のお仕事はお客様がいてこそ経営が成り立っています。当たり前ですね。
申告などの税務サービスを提供して稼いでいます。
だからお客様に契約を継続してもらうために気遣いをして当たり前です。
しかし、お客様>会計事務所ではない、特殊な関係性があります。
「お客様は神様」が通じない業界なのです。
お客様が税金を抑えようと不当な経理処理を求めてくることがあったとして。
とても大事なことは、時としてはっきりと「NO」と言う必要がある場面が出てくるということです。
「NO」という胆力がある人は職員さんに向いています。
ただ、断ればいいというわけではないことに注意してくださいね。
「NO」と言いつつも、円滑なコミュニケーションは必須ね
「不当な」なんてものものしい言い方をしましたが、実はお客様は「税金が安くなったらいいな」「ネットでみた節税情報の真偽は?」など軽い気持ちで聞いてくることも多く、99%以上のケースで本気で脱税を望んでいるわけではありません。
そして実は意見を言う機会はお客様だけでなく、上司である所長にも言うことがあります。
忙しい所長を捕まえ、相談し、助言を得る。これがいかに難しいか!
忙しさのあまり存外ぶっきらぼうに対応されてしまうこともあるでしょう。
そんな日は撤退し、次の日にまた同じ相談をする。同じ話をする。
所長だって人間だもの。いつも機嫌がいいわけではないわ。
同じ話をするのは勇気がいりますが、ときにはぶつかっていく度胸がある人は職員さんに向いていると言えるでしょう。
自ら不明点を調べる力がある人
会計事務所が取り扱う税務は、法人、個人、相続が有名ですがそれ以外にもたくさんあります。
給与計算、年末調整、法定調書、償却資産、印紙税etc……
知らないことは山ほど出てきますが、知らないことを都度質問していたら所内で嫌われてしまうこと必至です。
どこを調べたら、不明点がわかるか。まずは自分で考えましょう
インターネット(ガセネタ注意!情報の鮮度に注意!)か書籍か(情報の鮮度に注意!)
もちろん職員さんが勝手に判断することは厳禁で、上司(所長)に適宜 報・連・相しながらではあるけれど、まずは「自分で調べる」スキルは必須です。
「○○がわかりません。どうしたらいいですか」だけでは、相手に対して不誠実かもしれません
知識のレベルアップに抵抗がない人
毎年何かしらの改正がある税法の世界では、知識のレベルアップが必須です。
去年の常識が今年の常識に非ず。そんなことが頻繁におきる業界なのです。
幅広い税務の世界では、知らないことが山ほど出てくるうえに新しいこともどんどん出てきます。
最近でいうと2023年10月からスタートしたインボイス制度とかね
気力・体力がある人
繁忙期(確定申告のある2-3月、法人の決算が集中する5月)は体力勝負と言われています。
一説によれば、繁忙期の残業時間は40~60時間/月とも言われます。
資産税を扱う事務所では、昼間はお客様との打ち合わせ、夕方事務所に戻って書類作業となるので残業が多めになる印象です。
現役世代のお客様も多い資産税申告(相続・譲渡)では土日にお客様とのアポが入ることも珍しくはありません。
あるいはお客様の仕事終わりの平日19時アポとかもよくあるよ
しかし誤解しないでもらいたいのですが、私は子持ちでもこの業界でずっとやってきました。
具体的に状況を整理すると、
- 平日残業不可
- 平日は18時お迎え必須の公立保育園預け
- 日曜日は保育園休園
- 変わりにお迎えや育児をしてくれる人はいない
といったところでしょうか。
ブラックな事務所ではこんな職員さんは「使えない」烙印が押されてしまいそうですが、
「繁忙期の土曜日出勤はできるが、平日の残業はできません」と正直にお話して、それでも採用してくれた会計事務所は複数あります。
それらの事務所では税理士試験受験生も在籍しており、彼・彼女らは「繁忙期でもキチンと税理士試験予備校の授業に出たい」と希望して入所していました。
今は便利な世の中なのでオンライン授業もありますが、それだとモチベーションが続かないから絶対、予備校に行って直接授業を受けたいんだと言っていました。
税務の世界には申告期限が必ずあるので「(申告期限に)間に合いませんでした」は通じません。
残業しないとしても業務時間中に必ず自分の仕事を終わらせる気力・体力が必要でしょう。
向いていない人の特徴
これまで職員さんに向いている人の特徴を取り上げてきましたが、逆に向いていない人はどんな人でしょう。
掘り下げて考えてみます。
コミュニケーションスキルが極端に低い人
これまた誤解してほしくないのですが「コミュニケーション能力が高くないといけない」という意味ではないですよ。
自称:人見知りの職員さんもたくさんいます。(そう言っている人ほどお客さんとガハガハ大笑いしてたりする)
会計事務所業界もサービス業ですし、対顧客、対所内でコミュニケーション能力が必要になるのは普通の会社と変わりありません。
対所内でいうと、良くも悪くも小さい社会になりがちな会計事務所も多いです(特に歴史ある税理士事務所)
言い方を変えるとムラ社会的な部分が残っているってことだね。
ただあまり大げさに考えず、「挨拶ができる」「相談ができる」「報告ができる」そういった最低限のコミュニケーションがとれればOKです!
とあるアンケートによると会計事務所の退職理由の一番は「人間関係の悩み」からだと言いますが、どんな世界でも合う人合わない人がいて当然です。
お客様からすると、一度顧問契約した税理士を変更するのは難しいようです。
だからお客様とは何年にも渡るお付き合いになるので、人見知りでも全く問題ありません。
ただし関係が密になる分、コミュニケーションスキルが極端に低いとお客様からクレームが出ることも……
お客様の話をよく聞いて、心配に思っていること、不安を感じていることを聞き取るコミュニケーションがとれない人は向いていないと言えるでしょう。
人の好き嫌いが激しい人も向いていないね。
何でもすぐに質問する人
何でもすぐに質問する人は職員さんに向いていません。
通常業務のなかでわからないことは山ほど出てきますが、すぐに質問せず、まずは自分で調べることが必要です。
事務所にある本や国税庁のHP(ネット情報は真偽と鮮度に注意!)など調べる方法はたくさんあります。
ドンピシャのケースでなくても参考にある本や、判例は出てくるものです。
「絶対調べていないだろう」と思われると残念な評価が下されてしまうかもしれません。
「疑問点はまずは自分で考える、調べる」ことができない人は向いていません。
防げたミスを放置する人
ミスをすること自体は珍しいことでも悪いことでもありません。
にんげんだもの
大ざっぱな性格の人
めいじは大ざっぱな性格だと思っているので、これは耳が痛い話なのですが……
「まぁ、いっか」で作業を終わらせると痛いめをみる!と覚えておいてください。
何か気になることがあるのなら、突き詰めて考えましょう!
勘を頼りに仕事をする業界ではないのですが、自分の直感が「何かヘン」と感じることがあります。
帳簿だったり、申告書だったり、お客様の様子だったり…さまざまです
帳簿であれば、あり得ない数字が表れていたり(売上がいつも数百万円なのに、今月だけ数千万円になっている→入力ミス)
申告書であれば、予定より納税額が多くなっていたり(使える特例を使わずに申告書を作成している)
お客様の様子が何かそわそわしている(話したいことがある、職員さんではなく所長に相談したいと思っていることがあるなど)
これらの「何かヘン」を「ま、いっか」と流さない!
めいじのように大ざっぱだと思っている人は「向いていない」ことを自覚しましょうね(自戒)
仕事を抱えこんでしまう人
ひとりで仕事を抱えこんでしまう人は職員さんに向いていません。
質問をしすぎるな、と言いつつ「質問をしない人」はもっとダメなんですね。
疑問点が解決できず、いつまでたっても仕事が終わらないのは大問題です。
質問するところ、しないところのバランス感覚が大事だよ
会計事務所(税理士事務所)の職員さんに向いている人・向いていない人まとめ
職員さんに向いている人・向いていない人をそれぞれみてきました。
あなたは職員さんに向いている人ですか?あるいは向いていない人ですか?
この記事はめいじの主観によるところが大きいので絶対ではありません。
しかしけっこう的を得ているのではないかな、と思っています。
客観的に自分の適性が知りたい!という人にはキャリアコーチングなどの外部サービスを利用することもオススメします。
自分が考えている自分との差を埋めて、多くの職員さんが自分に合う良き会計事務所と出会えることを願っています!
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